タケルの構えは奥義ではなかった。
 ただ、それっぽく見せようと思って構えただけの出鱈目な構えだった。
 それでも元々の力量が彼の方が圧倒的に上だったので、奥義を出してきたヘムサスを撃破する事が出来た。
 ヘムサスは実力的には、タケルには遠く及ばないが、その精神は立派だった男と言えた。
 余裕を持っての勝利を得たタケルの前に次に立ちはだかったのはグレイザーという男だった。
 グレイザーもまた、実力的にはタケルには遠く及ばない男の様だ。
 雰囲気で解った。
 グレイザーの実力でもまだ、タケルには遠く及ばない。
 タケルは引き続き同じ剣で戦う事にした。
 グレイザーは獣人の様だ。
 特徴としては、その牙や爪が武器っぽい気がした。
 何の獣の獣人なのかはよく解らなかった。
 あまり見たことのないタイプの獣人と言えた。
「しゃーごぉっ」
 グレイザーは威嚇する。
 だが、タケルは動じない。
 あくまでもまるでハント(狩り)をするかのような気持ちでいた。
 相手は獣。
 そうとらえているようだ。