もちろん、技陣はこの2核の化獣の力を使って女を殺すつもりは毛頭ない。
 化獣の力を使わずとも、技陣の力であれば、瞬殺する事は簡単だろう。
 あくまでも、女を退ける脅しとして使ったのだ。
 だが、女は逃げない。
 ひるまない。
 神御(かみ)や悪空魔(あくま)の力を凌駕する筈のその力の片鱗を見せつけられても一行に退く様子が無い。
 眼が見えないから?
 いや、違う。
 この女はありのままを受け止めているからだ。
 このまま殺されてもそれはそれでありだと受け止めているのだ。
 だから、恐れない。
 それを察した技陣は、
「女、……名前は、……なんて言うんだ?」
 と聞いた。
 眼に入る者は全て敵であった様な殺気のこもった人生を歩んできた彼からは信じられない事だった。
 他人に興味を持っているという事になる。
「私の名前は、ノーマ・ルと申します」
「俺の名前は大和 技陣(やまと ぎじん)だ。……話くらいなら……聞いてやっても良い……」
 と技陣は、たどたどしく答える。
 こういう返答に慣れていないからだ。
 だが、技陣はノーマと話をする事になった。
 話をするからと言ってこの二人が今後行動を共にするという事はない。
 技陣はこれまでの行動をやめるつもりはないし、それだと、ノーマは当然、連れては行けない。