目の前のこの女は温かい世界にいるべき人間だ。
 悪党の居るこの町で出会うべき人間じゃない。
 だけど、このまま放っておけば、この女は悪党の憂さ晴らしの為にいずれ殺されるだろう。
 自分にはこの女を明るい世界に送ってやることが出来ない。
 自分の手は既に血塗られている――
 汚れた手で何かしてもそれは他の人間の不幸の上に成り立った事でしかない。
 技陣は悪党だけをなぶり殺しにしたつもりではいるが、それでも、誤解が誤解を生み、関係ない者をなぶり殺していたかも知れない。
 はっきりと確認した訳ではないからその可能性は捨てきれない。
 あくまでも直感的に気にいらない者をぶち殺して来たのだから。
 だが、この目の前の女は技陣が手にかけて良い人間ではない。
 それは解る。
 世間的に見ればどんなに薄汚れた容姿をしていようとも、技陣の直感からすれば、この女は天使の様に美しい心を持った女性なのだから。
「……俺にかまうな……」
 技陣は女を遠ざけようとする。
 自身の両腕に宿る、2核の化獣(ばけもの)5番、ルルボアと11番レーヌプスの力をほんの僅かに解放する。
 ルルボアは植物の化獣だ。
 それを象徴するかの様に、技陣の片腕が植物の木の様になり大きくなって行く。
 レーヌプスは闇のベールに包まれた化獣だ。
 もう片方の腕の闇を広めて見せる。