「もう、悲しまないで下さい」
 悪党の去った道ばたに女が一人残されていた。
 通りかかった技陣に話しかけてきた。
「女……俺が悲しんでいるってのはどういう事だ?」
 技陣は女を睨む。
 彼は女子供であろうが、気に障れば殺すだろう。
 そういう男だ。
 情け容赦が全く無いそんな男だからこそ、悪党達は彼を恐れるのだ。
「あなたはとても優しい人。でも、悲しくて悲しくてどうしようも無くなっている」
「てめぇに何が解る?」
 技陣は女を恫喝する。
 が、良く見ると、女は両目がつぶれている。
 擦り傷、切り傷は当たり前。
 顔が変形する程殴られた後がある。
 たった今まで暴力をふられていたのだろう。
 古い傷も癒えてない上から暴行され、あちこち膿んでいる。
 見た目には醜いと表現せざるを得ない女だが、技陣には不思議と美しく感じた。
「私は占いをして生活をしています。元々は娼婦でしたが、見ての通り、女性として魅力を感じて貰える事が出来ない容姿になってしまいました。子供も産めません。でも、人の心に秘める暖かさは見えるようになりました」
「お前……」
 技陣は名前も知らないこの女の事が気になり出していた事に驚いた。
 この女なら自分の奥底に秘めた悲しみをいやしてくれるのではないか……そんな気がしてしまった。