苦渋の決断だったが、迷っていたら、自分が同じ立場となっていた。
「うぉえっ……うぇ……えっ……うぉえっ……」
 みっともなく嗚咽を漏らす。
 殺さなければ殺されていたという状況に吐き気を止められなかったのだ。
 その姿を見て、レェバは、
(神様も苦しんでいらっしゃるんだ……)
 と思った。
 神官は
「ひっ……ひぃぃぃ……」
 と逃げ腰だった。
 心のゆとりともなっていた暗殺者のサポートが得られなくなり、敵であるクォンデルの赤ゴブリックと一対一の状況になってしまったからだ。
 ご神体として奉られている以上、負ける事は許されない。
 だが、神官の腕では、クォンデルには敵わない。
 絶体絶命に追い詰められるのは神官の方だった。
 赤ゴブリックはど派手に飾られていたご神体ゴブリックの飾りを全て引きちぎった。
 神官はたまらず、PRCで逃げ出す。
 この瞬間、人々の崇拝の対象だったご神体の権威は失墜、地に落ちた。
「離れなくちゃ……ここから……離れなくちゃ……」
 うわごとの様に、クォンデルがつぶやく。
 この場に居たくないという気持ちが強かった。
 とにかく、この場から逃げ去りたかった。
 この惑星ボイルに知り合いは居ない。
 ついさっき知り合ったレェバは後部座席に座っている。
 レェバの家族二人は赤ゴブリックと同化した。
 彼女には他に身よりが居ない。