実は同時刻、吟侍達の前にもこのクアンスティータ・セレークトゥースは出現している。
 クアンスティータにとって、存在は一つという概念は存在しない。
 その気になれば、全く変わらないパワーのまま身体を複数に分けることなど、造作も無いことだった。
 この場合、クアンスティータ・セレークトゥースは芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)とカノン・アナリーゼ・メロディアスの二人に会いたいと思ったから、身体を二つに分けたのだ。
 カノンと吟侍が別の場所に居たからセレークトゥースも身体を二つにした。
 ただ、それだけの事だった。
 吟侍の居る方ではクアンスティータの産みの母、ニナ・ルベルは役目を終え、別次元へと姿を消した。
 父、怪物ファーブラ・フィクタは第二本体クアンスティータ・ルーミスを産ませるため、ニナ・カエルレウスの元へと去っていった。
 産みの父母が姿を消したので、吟侍とカノンに父母の代わりを求めてやってきたのだ。
 吟侍は怪物ファーブラ・フィクタの後世の姿であり、カノンは生体データをクアンスティータに提供したため、もう一人の母と言って良い存在。
 だからこそ、二人を求めてクアンスティータ・セレークトゥースはやってきたのだ。
 そういう意味からある意味、母でもあるカノンはクアンスティータに対する恐怖心は無かった。
 むしろ、何者にも代え難い程の愛おしさを覚えた。
 クアンスティータを抱くカノン。
 その表情は聖母の様だ。
「くーちゃん……」
 カノンから言葉が漏れる。