それは神として、絶対に認める訳には行かないことだった。
 神が負けるなどあってはならないのだ。
 特に神話の時代、頂魔と共に、怪物ファーブラ・フィクタと魔女ニナの娘レインミリーに最悪の苦痛を与えた深達は気が気ではない。
 純粋な少女レインミリーが最強最悪の化獣(ばけもの)クアンスティータとして再生誕する事は何が何でも避けたいところだ。
 自分達が神の威厳を保つために、人が耐えられない痛みを全てレインミリーに押しつけたという事実は隠し通しておきたい事であると同時に、その復讐として、クアンスティータが産まれるとなると、自分達の立場が危うい事でもあるからだ。
 クアンスティータが暴れる事の全責任を負わされる事にもなりかねない。
 そのため、当事者である深達は青ざめていた。
 神自らが世の理に直接関与する訳にも行かないため、戦闘は天上使に任せているが、本来であれば、クアンスティータを強くしてしまうものは残らず、自分達の手で始末したかった。
 神の指導者たる自分達の立場がそれをさせてくれなかった。
 自分達が出れないのであれば、1級、0級天上使の出陣よりも如真(にょじん)プロジェクトの早期開始を提案するべきだと思っていた。
 神御の戦闘力を上回るとされる1級、0級天上使よりもさらに強大な力を与えられた如真だが、神々への絶対服従を最優先とさせているので、その調整に時間がかかっている。
『如真だ、如真を動かせ。天上使などに任せてはおけん』
『そうだ、如真を出せ』
『いや、待て、万が一、神へ反旗を翻したらどうするのだ』
『そんな事を言っていたら手遅れになる』
『だが、しかし……』
『そうやって、結論を延ばせばどうなるか……』
 神々は自分の意見を言っていく。
 だが、意見がまとまらない。
 結論の先延ばし。
 力を得て、その安定にあぐらをかいている者達にはありがちな事だった。
 だが、議題はクアンスティータについてだ。
 そんな事をやっていたら、手遅れになるのは誰もが理解していた。
 だが、クアンスティータに関する事で責任を持ちたくない。
 その心の弱さが神々に結論を先延ばしにさせていた。