影の無い人型が次々と現れた。
 人の様に見えてもこれは実体ではない。
 コーサンが作り出した、制限時間の存在する幻に過ぎない。
 1日だけの幻──その実体のある幻が消えた時、土地の記憶からもその幻は抹消される。
 非常に儚い存在、幻影だ。
 かつてこの地に住んでいた存在の幻が、コーサンの手足となり、カミーロを襲う。
 殺戮衝動の虜となり果てている彼女にとって、生きているカミーロの存在がこのグラン・ベルトで唯一、欲求を満たせる存在となっている。
 あらゆる手段を用いて、彼女はカミーロを殺しに来るだろう。
 この幻影はその先兵だ。
 だが、カミーロとて、ソナタの護衛任務を任されるだけの実力の持ち主でもある。
 ただの住民の幻影などに後れをとる彼ではない。
 例え、束になってかかってこられようとそんなに簡単にやられるようなたまではないのだ。
 カミーロは襲い掛かる幻影と次々に握手をする。
 カミーロの握手には鎮魂の効果がある。
 握手された幻影達は次々と満足して、昇天していった。
 正直、この地の刺客ではカミーロにとっては大した時間稼ぎにはならない。
 襲い掛かる住民全てを昇天させて、彼はコーサンの記憶をたどって行き、次の目的地に向けて進んでいった。