生活が滞る状態にしてまで金を返せとも言えない。
 ――が、彼女は信じるに足りる人物なのだろうか?
 生きるためだったとしても彼の懐から財布を抜き取って逃げたのだ。
 それは覆らない事実だ。
 だが、気の弱いフェリクスは、
「解った。3日だね。それだけは待つよ。だけど、それ以上は待てない。もし、逃げるようなら……」
 と言った。
「解ってる。逃げない、神に誓って」
「そう……」
 フェリクスとしては信じて良いのかどうかも解らず、守ってもらえるかも解らない約束をとりつけた。
 結果として、彼は3日間、この土地にいなくてはならなくなった。
 とりあえず、する事も特にないので、3日間、アウローラを見張る事にした。
 彼女としてもコンビニでのバイトがあるので、逃げ出せば、職を失う事になる。
 それは本意ではないだろう。
 彼女の人柄はバイトしている姿を見ていれば大体解るのではないか?
 そう思って、彼女を近くの喫茶店でコーヒーを飲みながら観察していた。
 少なくともバイトをしている時の彼女は真面目に働いていた。
 その姿からはとてもスリをした女の子とは思えない。
 生きるために仕方なくしたというのもあながち嘘とも思えなかった。
 バイトが終わると、アウローラはフェリクスが居る喫茶店まで来て、少し会話をして帰宅するという形を取っていた。
 アウローラとしては、何とか、フェリクスとは穏便に済ませたいという気持ちが合ったのだろうが、彼としては何だか、バイト帰りの恋人と待ち合わせをしている様な気持ちにもなっていた。