吟侍の心臓から様子をうかがっていたウィンディスは、
「貴女は……」
 とつぶやいた。
 どうやら、ニナと名乗る女の事を知っているようだった。
 ウィンディスの情報では、ニナ・ルベルと名乗る女の顔は全宇宙のトップアイドルと同じものだという。
 吟侍の恋人、カノンも歌手をやっているが、いかに歌がうまくても、彼女は全宇宙のトップアイドルにはなれない。
 それは全宇宙が広すぎるため、全域にカノンの歌を届ける事が出来ないからだ。
 だが、このニナ・ルベルは違う。
 それが可能なのだ。
 彼女は複合多重生命体(ふくごうたじゅうせいめいたい)だからだ。
 彼女は自身の分身をいくつも作る事が出来る。
 だから、さまざまな宇宙でその歌を披露することが出来る。
 また、空気のないところでも通る声、テレパス・ヴォイス、数千種類に及ぶ声質変化、1億オクターブを超える音階など全宇宙でトップになる要素を全て兼ね備えているのが彼女だ。
 彼女は複数の芸名を持っているため、本名というものが解らなかった。
 だが、彼女の本名がニナ・ルベルというのは納得がいくものがある。
 複合多重生命体であるならば、24の身体を持つ、クアンスティータを産み落とす事も可能であると思えるからだ。
 ニナの説明では、彼女は王杯大会エカテリーナ枠のゲストとして、呼ばれたらしい。
 正式には16名によるトーナメントが行われる前に紹介されるらしいが、その前に吟侍に挨拶に来たという。
 怪物ファーブラ・フィクタとしても同じ魂を持つ、吟侍の資質を確かめに来たらしい。