そして、お姫様だっこをして、女性のように見える何かを運んできた。
「なんだ、それは?」
 レズンデールが尋ねる。
 レディーメーカーは、
「彼女が相手をします」
 と言って、女性のようなものを舞台の上に寝かせた。
「遺体じゃないのか?」
 レズンデールは再び尋ねる。
「彼女は【トゥルースレス】です」
 レディーメーカーが答える。
「【トゥルースレス】ですって?」
 吟侍と共に試合を観戦していたウィンディスがビックリしたような顔を取った。
「知ってるのか?」
 吟侍は彼女に尋ねる。
「知ってるも何も……」
 ウィンディスは吟侍に説明を始める。
 【トゥルースレス】とは遺体の様な存在。
 生きていた時代があるわけではなく、突然、現れた不可思議な存在。
 全く意味をなさない存在とされているので、真実という意味のトゥルースに否定のレスをつけて【トゥルースレス】と呼ばれている。
 そのままでは全く動かないが、【疑似精神】をインストールすることによって、動かす事が可能であると言われているが、元々、意思のない存在なので、生者と理解しあう事は出来ないとされている。
 動かすという事はかなりの危険をはらむという事でもあるため、全能者オムニーア達は危険視しているものでもあった。
「ちょっとあんなものを本気で動かす気?」
 ウィンディスはハラハラと見ている。
「僕は彼女に恋してしまったんですよ。僕の人生は彼女に捧げても良いと思って……」
 ウキウキしながら、【トゥルースレス】に疑似精神をインストールしていたレディーメーカーだが、その途中で、【トゥルースレス】に首を跳ねられ絶命。
 レズンデールが慌てて、疑似精神のインストールを中断させて、また、慌てて、アンインストールした。
 その慌てぶりからももし、【トゥルースレス】が解放されていたら、大惨事になっていただろうことは容易に想像がついた。
 レディーメーカーの死亡により、レズンデールの不戦勝という形で勝敗がついた。
 この場にふさわしくない、レディーメーカーという青年が自身の妄想を膨らませ、【トゥルースレス】という危険なものに幻想を抱いて暴走したという結果になった。
 吟侍はまだまだ、自分の知らない脅威というものがあるんだと実感した。
 このエカテリーナ枠では初の死者が出た事になるが、元々、最低基準として、星を破壊出来るかどうかという参加基準が設定されている。
 死亡してもそれはやむなしという覚悟は全選手出来ている。
 それは吟侍やソナタについても同じ事だった。
 だが、吟侍はともかく、ソナタの方は死者が出た事に少なからずショックを覚えた。
 圧倒的な力を手にしたが、自分はこういう死者が出ても全くおかしくない大会に出ているんだと初めて実感したのだった。