それが、海空の選んだ作戦だった。
 だからこそ、試合は早い方が良い。
 身体のバランスが崩れまくっていて、ほとんど発揮されていない今だからこそ、出来る封印術をこの怯えながら戦っている少女に施す。
 そのための作戦を綿密に海空は立てていた。
「拙僧は七つ武器という武具を所持していてね。これはその一つ、来刀刃(らいとうじん)という刀身(とうしん)のない柄(つか)です。近いイメージで言えば、ゴルフのドライバーやアイアンのようなものでね。何種類もあるんですよ」
 と自身の持っている武器の説明をする。
 戦闘経験の未熟なフェンディナは勝手に今は戦闘の時間ではないと判断し、それを馬鹿正直に聞いている。
 実はすでに、海空は別の手段を実行していた。
 彼は使役した悪鬼仁(おきに)と呼ばれる鬼をベースにした怪物を召喚していた。
 黒悪鬼仁(くろおきに)と白悪鬼仁(しろおきに)と呼ばれる二匹の悪鬼仁(おきに)を小人化させて召喚し、こっそり超封印術の準備を進めていた。
 海空自身は会話で時間稼ぎを行っていた。
 使うつもりのない来刀刃の説明を長々としているのもそのためだった。
 フェンディナは素直な子。
 だから、闘いを仕掛けてこない相手には、出方をうかがうだけで、彼女も何もしてこない。
 また、彼女は吟侍の事が気になっている。
 同じ、化獣に浸食された者同士、悩みとか打ち明けたいと思っているのだ。
 この王杯大会エカテリーナ枠など、ついでに参加したに過ぎない。
 大して興味はないのだ。
 優勝しないと偽クアンスティータに殺されてしまうかも知れない。
 だから、参加しているのに過ぎない。
 闘いの気構えからして、フェンディナは他の参加者とは違っていた。
 やる気がないと受け止められていても仕方がない。
 そんな状態だった。
 だからこそ、海空の付け入る隙は十二分にあった。
「今だ、喝っ!」
「うっ、な、なにを???」
 海空の合図で、フェンディナが四方八方からくる封印札でがんじがらめにされる。
 この封印札は1枚あたり、ドラゴンでさえも数千億匹は完全消滅させる程の封印能力を持っている。
 それが、数百万枚フェンディナにまとわりつく。
 さらに、覆いかぶせるように様々な超封印術が施される。
 種類だけで、数百種類に及ぶ。
 やがて、一本の鉢巻きとなり、それがフェンディナの目を覆う。
「あ、あ……」
 フェンディナはうめく。
「これで声が出せるとは何たる潜在力。やはり、拙僧の考えは間違っていなかった。あなたを封じずして、拙僧の優勝はない」
 海空が叫ぶ。
 すると、フェンディナの頭から身体の透けた少年が現れた。
 ティルウムスだ。
『貴様、ワシになにをした?』
 どうやら、ティルウムスはまだ動けるようだ。