「よ、よろしくお願いします」
 とフェンディナがぺこりと挨拶した。
「こちらこそよろしくお願いします。いやぁ、助かりましたよ、フェンディナさん。あなたと今、戦えて。時間が経つ程、あなたには勝てなくなる。拙僧が勝てるとしたら、今、この時しかないと思っていましたからね。間違いなく、貴女はこの大会の参加者の中で最強の力を秘めていらっしゃる」
 と陸 海空は言った。
 フェンディナが力を出し切れていないのは吟侍も感じていたこと。
 殺し合いが勝敗の分かれ目ではないこの王杯大会では屈服させる事で勝利を得る。
 ならば、生命の危険の無い状態でフェンディナを制する事が出来れば、彼女の力を覚醒させることなく、陸 海空は勝てるとふんだのだ。
 海空には驚く程、優れた封印術がある。
 それで封印すれば、いかにフェンディナと言えど、動きは封じられるだろう。
 フェンディナに力を発揮させずに勝つ。
 それが、海空の必勝法なのだろう。
 海空にとっては、優勝の妨げになる不確定要素の第一位はフェンディナだと考えていた。
 だからこそ、邪魔なフェンディナを最初に潰しておこうという腹なのだろう。
 対峙する両者。
 海空の方は気が満ち満ちている。
 戦闘準備は万全と言ったところだろう。
 対して、フェンディナの方の気は乱れに乱れている。
 元々、10番の化獣ティルウムスが脳内に侵入して来たフェンディナは同じく身体に化獣ルフォスを侵入させていると噂のあった吟侍を追って、風の惑星ウェントスまでやってきていた。
 それまでは三名の姉にべったりだった彼女は争いというものから遠ざかった生活をしていた。
 フェンディナに降りかかる火の粉は三名の姉達が振り払ってきたのだ。
 だが、その姉達に心配させまいと、フェンディナは一人で旅に出た。
 しかし、ずっと姉の庇護の元で育って来たフェンディナにはすぐに危機が迫った。
 外からのならず者達や内側の脅威であるティルウムスの浸食だ。
 ならず者達からの脅威から解放されるにはティルウムスに全てを捧げるしかない。
 そうなれば、フェンディナは確実にティルウムスの傀儡となる。
 少なくともティルウムス自身はそう考えていた。
 だが、実際には違った。
 違っていたのだ。