ブレセ・チルマは以前思っていた。
 クアンスティータのおもちゃたるゼルトザームがなんで、カノンのような小娘をそれほど、気にかけるのだと。
 だが、気にかけるのも無理はなかったと今は思える。
 起きてしまったら、誰にもどうしようもないと思われてきた、クアンスティータとクアースリータの双子による影響で起きた事をこうして防いでみせたのだから。
 頭が下がる思いとはこのことだと思った。
 ブレセ・チルマは奮闘中のカノンの所に現れ、
「疲れているところスマンが、一度で良い。私のために、お前の歌を聴かせてくれないか?クアンスティータ誕生の前に聴いておきたいんだ」
 と言った。
 カノンはやはり、優しく微笑み、
「♪………………………………………………………………
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………………………………♪」
 同じ様に無言歌を歌った。
 それを黙って聴いていたブレセ・チルマは、
「誰に対しても、分け隔てなく、やってくれるんだな。――負けたよ。敵わないよ、お前には。私はお前ほどの器じゃない」
 と素直な感想を述べた。
 これは偽りのない言葉だった。
 出会った時は騙し合いのような形であったが、今は素直に言葉がでる。
 クアンスティータという圧倒的過ぎる脅威が迫っているからなのか、それともカノンの心に触れたからなのか、初めて、自分の素直な感情を表に出せる事の喜びを感じている。
 そして、それは決して、嫌な感情ではない。