心の底から震えがくる。
 雨の日に捨てられた子犬のように自分が震えてくるのを感じるブランク・ジャンキー。
 クアンスティータをどうにかしようなんて考えはバカのやることだ。
 ずっとそう思ってきた。
 だけど、そのバカな事を本気でやろうとしている者がいる。
 それも、軽く撫でれば壊れてしまいそうな華奢な女の子がだ。
 ブランク・ジャンキーは言葉が出なかった。
 カノンに対して、なんと言ったら良いのか全くわからなかったからだ。
 彼女が納得するような答えを自分が持っていないのが悔しくてたまらなかった。
 自分では届かない。
 届きようがない。
 ブランク・ジャンキーは初めて、他者に対して無力感を感じた。
 それは、立場こそ、違えど、ブレセ・チルマとて同様だった。
 彼女は今までカノンを利用する事だけを考えて来た。
 が、彼女の真っ直ぐな行動を前にすると、なんて自分はちっぽけなんだと思えてくる。
 ブランク・ジャンキーもブレセ・チルマも悩みに悩んでいた。
 それを見ていたユリシーズは、
「やるのか、やらねぇのか、どっちだ?」
 と言った。
 ユリシーズとて、クアンスティータはちびりそうなくらい怖い。
 が、どれだけ、かっこ悪い思いをしようが、彼はカノンについて行く事に決めている。
 吟侍には負けたくないからだ。
 吟侍だったら、クアンスティータを前にしても、カノンを放り出してバックレるなんて事はないだろう。
 他の七英雄やシアン、パストも同様だった。
 彼ら彼女らはカノンの足を引っ張るためについて来た訳じゃない。
 例え、微々たる事だったとしても彼女の助けになればと思ったからこそ、決死の覚悟で危険な救出活動についてきたのだ。
 最低でもカノンだけは死なさないように。
 それだけは譲れないとして。