カノンがふらつくと、
「負けないで女神様」
「負けるな」
「頑張って」
「俺達がついてる」
「頑張れーっ」
 と次々と声が上がる。
 カノンの無言歌により、城にいた者達の心が一つになろうとしていた。
 中にはライバルである歌優達もいる。
 負けられないはずのカノンに対して、本当の救いを得たかのような感涙の表情を浮かべていた。
 次々と病を克服し、回復した者達が更なるカノンの力となるべく、応援の声を上げる。
 この場に立っている者達で彼女を敵とする者はいなかった。
 七英雄達も復活し、後は、最も【うしろめたさ】を抱えていた、上位絶対者アブソルーターの二名、ブレセ・チルマ・フェイバリットとブランク・ジャンキーを残すのみとなった。
 この二名は惑星アクアの頂点に君臨していただけあって、それ以上の脅威を知っていた。
 故に、この二名を襲う悪夢も一筋縄ではいかなかった。
 それでも、カノンは優しさを二名に送る。
 思えば、ブレセ・チルマもブランク・ジャンキーも情けというものを受けた事はなかった。
 常に、支配者という立場に居た二名は、下からはい上がって来る者を警戒し、ずっと緊張の連続だった。
 トップであるが故に、弱音も吐くことが出来なかった。
 孤独感と常に共にいた。
 同じトップ同士であっても、それは腹の探り合い。
 心を許せる友など、誰もいなかった。
 その二名にカノンの温かさが染み渡る。
 時間はかかったが、やがて、自分達への【うしろめたさ】に打ち勝った。
 いや、打ち勝ったという言い方は正しくはない。
 受け入れたのだ。
 それは自分達の背負った業、過ちだと。
 ブレセ・チルマとブランク・ジャンキーもやがて目を醒ました。
 と、同時にカノンが倒れた。
 精魂使い果たしたのだ。
 そのまま死んだように眠った。
 次に目を醒ました時は3日が経っていた。
 目を醒ました場所はブランク・ジャンキーの特別寝室だった。
 看病はブレセ・チルマとブランク・ジャンキー自身が自ら買って出ていた。
 つまり、カノンは最重要の国賓として迎え入れられていたのだ。
 カノンはカノンなりの戦い方で見事勝った事を意味していた。