カノンはとっさに無言歌(むごんか)によるホーリーソングを歌いだした。
「♪…………………………………………
……………………………………………………
………………………………………………………………
……………………………………………………
…………………………………………
…………………………………………
…………………………………………
………………………………
…………………………………………
………………………………
……………………
…………………………………………
…………………………………………
………………………………♪」
 なぜ、無言歌なのか?
 それは、それぞれの存在によって、最も心に響く言葉のキーワードが違うからだ。
 全員に共通させて、癒すためには、言葉として発しない、無言歌が最も効率的なためだ。
 効率的と言っても、その無言の歌に様々な意味を乗せて歌い上げるため、その重圧と疲労は普通のホーリーソングとは比較にならない。
 また、このホーリーソングはドレミファソラシ以外の音も複数、出しているため、人の身であるカノンには相当な負担となっている。
 さらに、それを歌いながら、同時にこの事態の解決策を考えながら、さらに隔離結界を維持しなくてはならないという離れ業は想像を絶する程、過酷すぎる状況だった。
「さすが、カノンさんですね。このゼルトザーム、脱帽です」
 カノンの姿を見て感動を覚えたような表情を浮かべるゼルトザーム。
 それを見ていた、シアンが
「冗談を言っていないで、カノンに協力しなさい、ゼルトザーム」
 と言った。
 親友のカノンのために出来る事と言えば、このクアンスティータのおもちゃに対し、カノンに協力するように強く言う事くらいしかない。
 例え、まともに戦って、勝てる相手ではないとしても、強く言えないカノンの代わりに自分達が言うしかない。
 シアンも同意見で、彼女の得意技、24色の魔法糸を出している。
 パストも得意の契約のサインの準備をしている。
 どちらもルフォスの世界で身に着けた力だが、ゼルトザームの力には遠く及ばない。
 勝てないとわかっていても彼女達に出来る事はカノンのために体を張る事くらいしかないのだ。
 命を賭けてでもゼルトザームにカノンの手助けをさせる。
 シアンとパストはそんな悲壮感漂う決意をしていた。