ユリシーズ達は
「姫さん、俺が出るから」
 とか言ってくれたがこれはカノンが挑まれた勝負。
 例え代理の誰かに頼み、その誰かが、ブランク・ジャンキーを叩き伏せたとしても彼は納得しないだろう。
 ブランク・ジャンキーは代表者たる彼女に勝負を挑んできたのだから。
 ブレセ・チルマとしても、優秀な歌優を失う訳には行かないので、その勝負に立ち会う事にした。
 もしもの時は助けに入るつもりだったのだ。
 思う所はそれぞれあった。
 だが、実際、ブランク・ジャンキーの城に着いた時、予想外の事態が起きていた。
 ブランク・ジャンキーも含めた城の者が全員倒れていたのだ。
 中には歌優らしき人間達もいた。
「ま、まさか、これは……【隔離結界(かくりけっかい)】!」
 カノンは慌てて、周囲に【隔離結界】という結界を張った。
 これは、特定の相手を閉じこめるもので癒しの女神御セラピアの力でもあった。
 この力の使いどころは相手の暴走を止めるためと、もう一つは伝染病などが起きていたら、患者を隔離するためのものだ。
 そして、今回は後者だった。
「カノン、何の真似だ?」
 一緒に閉じこめられたブレセ・チルマは尋ねて来た。
「ご、ごめんなさい。まさか、こんなに進行しているとは……」
 カノンは明らかに動揺していた。
 【隔離結界】をした理由をカノンはまだ元気で立っている仲間達とブレセ・チルマに話して聞かせた。
 簡単に言うと【スーパーナチュラル】、その影響が出始めていた。
 ブランク・ジャンキー達が倒れているのはそのためだと言う。
 クアンスティータとクアースリータは卑怯者を嫌う化獣でもある。
 そのため、【スーパーナチュラル】ではその選定が行われる。
 この現象は自身の【うしろめたさ】に反応する病だという事だ。
 クアンスティータやクアースリータを除く、その者が最も恐れている者に襲われるという不可思議な病だった。
 病と言う言い方をしているが、実際には病とは別の何かだろう。
 敵は自分自身が作り出しているので、逃げることは全く出来ない。
 その者が最も恐れる存在はその者の記憶の中でしか存在しないため、通常では割って入る事は出来ない。
 正に、自分自身に殺されるという現象が起きると言うのだ。
 さらに、言えば、これはあくまでも前兆に過ぎず、近い内に本当の波がやってくるという事をカノンは告げた。