その疑問に対して答えてくれたのはアリスだった。
「恐らく、魔薬 アブソルートを過剰投与されたのね。あれは、元々、絶対者アブソルーター達が自身の力を向上させるために編み出されたもの。だけど、その薬が完成するまでには様々な人体実験が行われたと思うわ。彼はモルモットの様に、アブソルートを打たれ、身体の変化を見る実験体として扱われたんだと思うわ。この薬が人間にはあっていないという事を証明するには、人間に投与して見ないとわからない。彼はその犠牲者ってところね」
「な、なんだと……」
 琴太はやり場のない怒りを覚える。
 友達が攫われてすぐに助けに向かえなかった事がこんな悲劇を生んでいた。
 友達は奴隷として攫われたと思っていた。
 不当な扱いを受け、苦しんでいるんだと思っていた。
 が、人体実験までされているとは思ってもみなかった。
 アンドリューは言った。
 友達を食べたと。
 友達を食べてしまったことが彼の精神を壊したのかも知れない。
 後はアブソルートの魔の力に浸食され、なんだかわからない存在へと変えられてしまった。
 許せない。
 こんな非道は許せない。
 が、アンドリューがこの状態では、彼をこんな状態にさせた者の事は解らない。
 怒りのぶつけどころが解らないのだ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 琴太は吠える。
 アンドリューがこんな状態では心臓がどこにあるかもわからない。
 手あたり次第、殴って、鍵を出すしかないが、いくら殴っても鍵が出てこない。
 それは、心臓が見つけ出せてないからなのか、心臓が心臓ではなくなってしまっているのかもわからない。
 どこまで、打撃を与えればいいのかもわからない。
 打撃がアンドリューを苦しめているのかもわからない。
 八方ふさがりの状態だった。
 どの様に対処すれば良いのかまるで見えてこなかった。
 アンドリューだと推定しているものを殴りながら、琴太は涙した。
 友達を殴り続けなければならない苦しみ、解決策が見つからない苦しみ、自分が助けにならないという絶望感、怒りをどこにぶつけていいのかわからない焦燥感、等、様々な感情が入り乱れた。
 それを見ていたウェンディが、
「もう、良い、あたいがやる……」
 と言った。
 そして、アンドリューのようなものに同化し、組織を分解させていく。
 アンドリューだったものは小さな花に姿を変えた。
 合成能力者であるウェンディは彼を花に変える選択をしたのだ。
 脳まで浸食されてしまって彼の精神は元には戻らない。
 が、壊れたままでも基本的に動かない植物のままならばせめて、生きたまま──
 というのが、ウェンディが取れた最善の案だった。
 それ以上の案は彼女には思いつかなかった。
「身体で人間の部分は残ってなかった。だから、これ、仲間のところで埋めてやると良い」
 と言って、ウェンディは花に姿を変えたアンドリューを琴太の手に渡した。
「すまねぇ……すまねぇ……」
 琴太は声を絞り出す。
 それはつらい役目をさせたウェンディに言ったものなのか、こんな状態になったアンドリューに言ったものなのかはわからなかったが。
 琴太は男泣きした。
 ドゥナの星見ではこんな悲劇が起こるとは予想して居なかった。
 琴太はアンドリューを救えなかっただけじゃなく、アンドリューが食べてしまった友達の名前の確認さえ出来なかった。
 琴太達の行動は徒労に終わった。