03 ニアエヴァ来襲


 悩んでいる暇は私達にはなかった。
 少しすると、続けざまに私達の宿屋に襲撃に来た連中がいた。
 【フォーユー】だ。
 ティアグラの使徒である彼らは私達がルフォスの世界で異能力を身につけたと同じように、ティアグラの世界で異能力を得ている人間たちだ。
 ルフォスとティアグラは犬猿の仲。
 当然、それぞれの世界で身に着けた者同士も仲が良いとは言えないだろう。
 絶対者アブソルーターとは違い、生身の人間なので、攻撃の仕方次第では倒すことはそう難しい事ではないと思う。
 だけど、油断はできない。
 敵の人数はざっと29人。
 ティアグラはルフォスと比べて、自身の力の強化よりも配下を増やす事を重視したとされる化獣だ。
 なので、【フォーユー】の人数もやっぱり多い。
 特殊能力者達は様々な力を駆使して、私達を襲う。
 私は導造君をたたき起こして臨戦態勢に入る。
「え?何?どうしたの?」
 と寝ぼけた事を言っている彼に
「敵よ。構えて」
 と私は伝えた。
 それでも寝ぼけている導造君は何故か、自分の両手をパンと叩いた。
 すると導造君の姿はそこから掻き消え、別のところから姿を現した。
 導造君の体内に入った私は解る。
 これは【見えないトリガー】とは別の力だ。
 おそらく、手を叩き、その音が届く範囲で瞬間移動ができるというものだ。
 もし、これが使いこなせるようになったのであれば、【見えないトリガー】で大きな音を立てて、その音が聞こえる範囲で瞬間移動が出来るようになったら、かなり有効な戦術になる。
 【見えないトリガー】は銃口が読まれがちだが、音による瞬間移動と組み合わせれば、戦術の幅は広がるからだ。
 禍を転じて福と為すじゃないけど、導造君の中で何かが変わったのかも知れないと私は感じた。
 また、ほとんど反則的な力を使っていたとは言え、中位絶対者クラスのニアリリスを倒したという自信も後押ししているんじゃないかと思った。
 ティアグラの世界で身につけたと言っても生身の人間。
 それは私達にも言えることだけど、死の恐怖に打ち勝ち、ニアリリスDを倒せた導造君は少し自信がついたのだろう。
 気づけば、私達の中で、一番多くの刺客を撃退していた。
 ティアグラは他者の力をあてにし、ルフォスは自身の力を高めていく。
 それが、それぞれの所有する世界で力を身につけた者にも影響しているのか、【フォーユー】は確かに数は多いが個々の能力者の戦闘能力はそれほど高くない。
 それよりは、私達の方が、戦闘能力は高いみたいだった。