024 事務スタッフを雇おう

 リタ・ウェーバーという強力なクエスト・ガイドが加わった【卯月クエスト・オフィス】だが、事務スタッフが居ないと、クエスト・ガイドがそれを行わなければならない。
 卯月とリタはそういうタイプではないので、必然的にXくんが事務作業をやる事になる。
 そのため、貴重な戦力であるXくんが事務メインの仕事を余儀なくされている状態なのだ。
 これは宝の持ち腐れ状態と言える。
 Xくんには、是非とも数多くの開拓冒険に参加してもらって、【卯月クエスト・オフィス】で案内できる冒険地を増やして行って欲しいところだ。
 なので、まずは、事務スタッフを雇う事が必要不可欠となった。
 いくつか小さな冒険案内をして事務スタッフを雇う余裕は出てきた。
 事務スタッフはクエスト・ガイドとしての技量は必要ない。
 事務作業をこなしてくれる力があれば事足りる。
 だから、簡単な話だ。
 そう、高をくくっていた。
 だが、現実問題はそう甘くは無かった。

 まず、クエスト・ガイドという職業自体がメジャーではないというのが一点だった。
 クエスト・ガイドの事務スタッフとして活躍するよりも勇者達のマネージャーとして活躍した方がずっと脚光を浴びるからだ。
 ボスを倒すという事が殆どない、クエスト・ガイドの事務スタッフになろうという人間はそう、多くは無いという現実がある。
 それでも、新しい職場でやってみたいという者は必ずいるが、そういう人間はたいがい、大手のクエスト・ガイドオフィスに流れて行く。
 弱小オフィスである【卯月クエスト・オフィス】に入ろうという物好きは早々いないのだ。
 たまに、やってくる応募者は何も考えて無いか、する事がないので、仕方なく来たという連中ばかりだった。
 命の危険もある仕事なので、いい加減な人間にその事務処理を任せる訳にもいかず、来た人間は全員不採用とせざるを得なかった。
 命を預かる仕事である以上、誰でも良いという訳にもいかないのだ。
 しかし、条件をつり上げれば、それだけ、応募者も減っていく。
 これだと思える人間はまだ、一人も居なかった。
 このまま、悪戯に面接だけ続けても一年間という期間はあっという間に進んで行ってしまう。
 クエスト・ガイドは開拓冒険をして、たくさんの冒険者に案内をしてなんぼの商売だ。
 面接だけをズルズルと続けていく訳にもいかなかった。
「こないね……これだと思う人」
「てきとーなので良いんじゃないですカ、それより、ミーは冒険に出たいネ」
「そうもいかないよリタさん。大事な事だから」
「うーん、こっち来たの、はやまったかな?」
「そんなこといわないでよ。何とかしたいとは思っているんだから」
「Xくんは何してるですカ?ここの所、見ないですガ?」
「しばらく留守にすると言って一週間かぁ~、どうしたんだろうねぇ?」
 連日の面接に疲れているのか卯月とリタはダラぁっとしていた。
「なんですか、二人とも、だらしない。せっかく、良い知らせを持って来たのに」
 戻ってきたXくんが呆れた。
 二人を残しておくと何も進展しないと思ったからだ。
「Xくんこそ、どこ行ってたのよ。心配したんだから」
「そーネ、心配したネ」
「もちろん、事務スタッフをスカウトしてきたんですよ。待っているだけじゃ埒があきませんでしたからね。こちらから出向いたんです。あなた方は何をしていたんですか?する事が無いならスキルアップに勤めていただいた方が良かったのに」
「えー、でも事務スタッフ優先だって、Xくんが」
「お二人にはあまり期待してないから鍛えていて下さいと言って出て行ったつもりですが?」
「悔しいから、二人で、事務スタッフ見つけようって事になって……」
「待っているだけじゃ、無理ですよ。こっちも動かないと」
「どこ行ってたですカ?」
「あちこちです。連れてきましたよ。精鋭スタッフを」
 Xくんはにっこり笑った。