02 九歴家

「駄目だ、認めんぞ、私は!」
「パパが認めなくても私はやるったらやるのよ」
「そんな事のために私は資金援助したわけではない!私はてっきりキャビンアテンダントかバスガイドの様なものだと思ったから援助しただけだ。お前達の花嫁修業としてな」
「資金援助については感謝してるけど、私はやるったらやるのよ」
「何でお前達6人は揃いも揃ってクエスト・ガイドなんて聞いたこともない職業にそこまで執着するのだ」
「私達の夢だからよ、だから、ね、お願い、パパ」
「危険を承知でそんな場所に娘を送る親が何処にいる?パパは絶対に認めんぞ」
「パパのバカ、もういい……」
 卯月は父、九歴 師走(くれき しわす)と衝突した。
 師走にとっては大切な娘達を危険地帯にやることなどもってのほかだった。

 娘達――というからには師走には他にも娘がいた。
 そう、卯月には姉妹がいるのだ。
 異母姉妹達が。
 男子の跡取りが欲しかった師走は6人の女性と同時期に関係を持った。
 そして、六人の女性はそれぞれ身ごもりそれぞれ出産した。
 それで生まれたのが、卯月達6人姉妹だった。
 他の姉妹の名前は生まれた順番に睦月(むつき)、如月(きさらぎ)、弥生(やよい)、皐月(さつき)、水無月(みなづき)とつけられた。
 卯月は四番目に生まれたので一応、四女という事になっている。
 卯月の母親と師走は結婚したので、彼女が正妻の子供という事になっている。

 そんな複雑な九歴家だが、代々続く名家で様々な事業を展開して発展していった家柄だ。
 が、子宝には恵まれない家系で跡取り問題ではいつも苦労していた。
 そのため、師走は妾も含めて子作りをしたのだが、肝心の男子は結局、生まれず、娘達が6人生まれただけだった。
 小さい頃は誰が、父の後継者になるかでギスギスした家族関係だったが、今は行方不明の根角が仲を取り持って今はある程度、交流がある。
 年頃になった娘達に次々と見合いの話をもって行く師走だったが、娘達は悉くそれを断り、それぞれが会社を立ち上げたいと父に願い出た。
 全員がクエスト・ガイドと言うので、最近、若者で流行っている職業かと思い、よく調べもせずに娘達に資金援助をした。
 それにより、娘達は次々と会社を立ち上げ、そこの社長兼クエスト・ガイドに就任した。
 娘達はみんな、根角の事が好きで、彼の夢を引き継ぐために動いていたのだ。

 そして、しばらくして、師走は秘書の口からクエスト・ガイドという職業の事を聞き、一転して反対しだしたのだ。
 だが、刻、既に遅し…
 手を回すに良いだけ手を回し――娘達は決して止めようとはしなかった。
 卯月の姉妹達も同じように頑として父の反対を聞き入れなかった。
 現在、娘達の会社以外にも12の関連企業がクエスト・ガイドの養成に取り組んでいて、協力関係を結んでいて、来年の営業開始に向けて着々と準備が進んでいる。
 今は試験運営中だった。
 今更、例え、師走の力でも、事業自体を潰す事は出来なくなっていた。
 師走はもっと早く、気付くべきだった。
 娘達がずっと血の滲むような修業をしていたという事に――
 それが、全てクエスト・ガイドになるという目的のためだという事に――
 後悔、先に立たずだった。