柾稀に選ばれた少年の名前は平尾 統吾(ひらお とうご)。
 【キス・オブ・プリンス】としての要素が極めて少ない人物だった。
 資質が無く、周囲からも期待されていない少年の眠れる少女達を目覚めさせる物語が始まろうとしていた。

「柾稀先生、何で俺、選ばれたんですかね?適応率ってのを計ったら、やたら低くてバカにされてたのに……」
「僕に欠けている何かを補ってくれる――そう思ったから、僕が推薦したんだ」
「先生にない何かって、俺、そんなに才能あったんですか?」
「今の所、見あたらないな……」
「そうですか……」
 師匠となった柾稀に自分が何故、キス・オブ・プリンスとして選ばれたか聞いてみたものの、良いところが見あたらないと言われ、統吾はシュンとなった。
「しいて、あげるなら、僕の適応率が九十八・七パーセントで、君が一・三パーセント。足すと丁度、百パーセントになるだろ?だから、僕はこれも縁かな?と思ったんだよ。選ばれたという事は運は多少はあるって事じゃないか?僕は【キス・オブ・プリンス】が幸せな事だとは思わないけど、なりたい人はいっぱいいると聞いているし、君もなりたかったんだろ?」
「そりゃ、人類の救世主だし、なりたくないって言ったら嘘になるけど、俺はなれると思って無かったから」
「君はまず、自信をつけるところから始めないとだめそうだね。でも、欲望むき出しの人よりかはいくらかましだと思うけどね」
「まし……ですか?」
「そう……まし」
「はぁ……」
 統吾はため息が出た。
 才能があると言って貰った訳ではなく、他よりいくらかマシという評価しかない自分が不甲斐なかったからだ。
 期待されていた柾稀は世界政府のサポートを受けていたが、才能のさの字もない自分には、世界政府のサポートはない。
 それどころか、統吾は頼りにならないと思われていて、【キス・オブ・プリンス】以外の方法を模索し始めているらしい。
 【サクリファイス・エンジェル】計画というもう一つのプランが動きだそうとしているのだ。