苦しみ続けて、1月が経ち――
 姉はいつものように、才色兼備の仮面を被って、才媛を演じている。
 だが、その顔は晴れやかだ。
 彼女はブサ(イク)メイクを習得し、正体を隠して今日も向かっていた。
 ガチャガチャのある所へと。

 いつしか弟にも負けないくらいの消しゴムフィギュアが姉の部屋を満たしていた。
 姉の目標は弟の活躍する世界を舞台に自分も行くことだ。

 母は言う――
「ちょっと、紗唯ちゃん。最近、お手伝いさんが部屋のお掃除をさせてもらえないと言っているんだけど、どうしたの?あなたの事だから、部屋を散らかしているという事はないでしょうけど」
「えぇ。もちろん、そうですわ、お母様。私も十六才になったのだから、部屋の掃除は自分でしようと思っています」
「そう、なら良いのだけど、お手伝いさんがあなたが、部屋からおかしなかっこうをして出て行ったと聞いたものだから」
「き、気のせいですわ。そのお手伝いさんは疲れているんですわ、きっと。休ませてあげないと」
「そうよねぇ、あなたがおかしな人形を持っていたとも言っていたし」
「い、いやですわ、お母様。わ、私がそんなもの……」
 姉は必死で誤魔化した。
 家の人間に、自分の趣味を知らせる訳にはいかない。
 弟にもだ。
 これは姉だけの秘密。
 姉のガチャ道を極める物語が始まろうとしていた。
 3Dプリンターの進化と共に、この世界も盛り上がっていく。
 これは引きの女神と呼ばれる姉とガチャ界の帝王と呼ばれる弟を描く物語である。