序章 才媛の姉、オタクの弟


「おはようございます」
「あら、おはよう、紗唯(さゆ)ちゃん。今日も綺麗ねぇ」
「そんなことないです」
「みんな噂してるわよ。文武両道、才色兼備、気遣いもあって家柄も申し分なし。正に完璧超人だってね」
「オーバーですよ。そんなの」
「オーバーでも何でもないわよ。謙遜しないの。私の娘だったらって何度、思ったことか」
「ありがとうございます。私、こちらですので失礼します」
「じゃあね」
「はい」
 長坂 紗唯(ながさか さゆ)十六才。
 近所のおばさん達が言う様に、正に完璧な美少女だった。
 ある一点を除いては。
 その一点とは、彼女の双子の弟、長坂 陽太郎(ながさか ようたろう)の事だった。
 彼女と双子である陽太郎は容姿には全く問題はない。
 だが、彼は生粋の変態として近所では評判だった。
 色々と特殊な趣味を持つ者として、有名だった。
 勉強はおろそかにしていて、成績は下の中。
 運動神経も無かった。
 その全精力を特殊な趣味に使っているという。
 同じ双子で、どうしてここまで違うのか?
 近所では、七不思議の一つとして考えられていた。
 才媛として通っている姉、紗唯は出来るだけ、弟に関わらないで生きていこうと思っていた。
 所詮、自分とは住む世界が違う。
 そう思っていたのだ。