「リグレット、連れなくするなよ、可哀相だろ、シリスちゃん」
「こんな可愛い子に言い寄られているのに勿体ないとは思わねぇのか?」
 店の客はリグレットの気持ちを理解していないのか、シリスの恋を後押ししようとする。
 シリスの人柄はつい応援してあげたくなるような優しい気持ちにさせてくれるようなものだった。
 シリスは純粋だ。
 魔女神であるのが嘘のように――
 悪い子では決してない。
 それは解っている。
 解ってはいるが、それを受け入れるだけの度量が自分に備わっていない事も理解していて、余計モヤモヤするのだった。
 そんな事よりも、シリスを連れ出してしまったので、茶色の魔女神マリスの顔に泥を塗った事になってしまっているのだ。
 いつ、その報復に来るかも知れない。
 魔女神としてはまだ未熟なシリスの加護だけで、対抗出来るのかどうか解らず、もしかしたら、刺客との戦いでやられてしまうかも知れない。
 仇であるアエリスを討つ事もできずに、全く関係ない魔女神との戦いで敗れ死ぬ。
 それだけは絶対に我慢できなかった。
 目的も果たせずに死にたくない。
 死ぬのはアエリスを殺した後でだ。
 それだけは譲れなかった。
 リグレットの抱えた闇は深い。