シリスはアエリスとは違う。
 根は良い子だというのは理屈では解っている。
 だが、感情として、アエリスと同じ魔女神という事実が彼女との溝を作っていた。
「ダーリン、こっち来てよ。お酌してあげる」
「いらん。そっちはそっちで勝手にやれ」
「えーっ……ダーリンがいないとつまんないよぉ」
「良いか、これだけは言っておく。俺はお前とはたまたま、目的がかち合ったから協力関係を結んでいるだけだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「あたいにとって、あれはとらわれのお姫様を助けてくれた王子様なんだよ。お姫様はあたい、王子様はダーリン。とってもハッピーな事だったんだよ」
「俺は自分の元婚約者を八つ裂きにして殺そうと思っている残虐な男なんだよ。こんな俺とハッピーに慣れる訳ねぇだろ。ハッピーって言葉は俺の勘に障るんだよ」
 リグレットにとって、【ハッピー】って言葉はアエリスの殺戮の時に浮かれていた自分の感情を思い出してしまうNGワードだった。
 俺に幸せは似合わない――
 俺はただ、復讐のために生きるのみ――
 アエリスを殺した後、俺も……
 リグレットはただ、それを考えていた。
 自分は生きていても仕方のない人間。
 そう自己分析していたのだ。
 今、生きる糧はアエリスに対する絶対的な憎悪、怒りのみ。
 他には何もない――。
 それが、リグレットの思考を支配していた。
 大切なものはすぐ側にいるのに、今はそれに気づけずにいる。
 そんな不幸な男だった。