どこか目が虚ろで焦点が合っていないような感じだった。
 女生徒の頬をパチパチ叩いてみたが、反応がおかしい…
 そうこうしている内に他の生徒が屋上に上ってきた。
「あ、おい、こいつ、おかしいんだ。保健室に…って、おい、お前、何やってんだ?」
 もう一人の上がってきた生徒に保健室に女生徒を運ぶように言おうと思った利休が目にしたのはその生徒も別の場所から金網をよじのぼりはじめたのだ。
 慌てて、その生徒も止めに走る利休だが、更に三人、生徒が屋上に上がって来て、全員が金網をよじのぼりはじめた。
 その中の一人はハチだった。
 ハチも見るからに正気とは思えない表情だった。
(ま、間に合わねぇ…)
 同時に四人が別々の場所で金網をよじのぼりはじめていて、利休一人ではどうしようもなかった。
 それを助けたのは…
 昨日、窓から、利休達を見ていた少年…詠稀だった。
 彼が、生徒達の額にデコピンをしていくと耳の穴から黒い煙のようなものが立ちこめて生徒達は次々と気を失っていった。
 利休が最初に助けた女生徒も含めて5人にデコピンして出てきた煙をパパっと祓ってみせた。
「お、お前…何を…」
「…この黒い煙は【ウツ】という名前の怪物の栄養になる…」
 状況が解らない利休に詠稀はそれだけ伝えて去っていった。
 最後に、利休の額にもデコピンをしてやはり耳から出てきた小さな黒い煙を祓って。
「【ウツ】…?」
 残された利休はそうつぶやくのが精一杯だった。