…んではいなかった。
むしろほくそ笑んでいた。
そう、亨はパンドラの回し者
彼は変装し、自ら子供達にパンドラパズルを配っていた。
パンドラパズルを止めようというホームルームの議題も子供達の悪戯心を刺激し、かえって煽るためのフェイクだった。
人の不幸は蜜の味…。
そう思う人間は少なからずいる…。
そんな人間がいる限り、パンドラの悪夢は終わらない、止まらない…。
駆逐されても、新たな悪夢を考え出し、その度に人々に不幸を撒き散らす。
今日も亨はパンドラパズルを配るために変装して、子供達に近づいて行く…
だが…
「高梨 亨さんですね、ちょっと聞きたい事があります。ちょっと署までご同行願えますか?」
「い、いや、俺は…違います…違うんです…」
「話は署の方で聞くから…あ、こら待て、逃げるな!」
悪い事というのは長く続かない。
ずっと同じ悪事を続けていたらきっと足がつく。
悪事を働く人間の多くはそれを予想する想像力がない…。
亨もそのタイプの人間だった。
亨は逃亡中、ビルの屋上から飛び降りて死亡した。
亨の部屋からは大量のパンドラパズルが発見された。
警察は亨の犯行を見抜いていた訳では無かった。
彼の教え子の一人がスーパーで万引きして、亨に指示されたと嘘をついたのだ。
それで、警察は万引きする子供の言うことだから信用した訳ではないが、一応、亨に事情を聞こうと思って声をかけただけだった。
因果応報…
悪意を人に振りまく人間には別の悪意が降りかかる。
亨は自分のしている事の後ろめたさから人生にピリオドを打つことになってしまったのだ。