柚璃がかけた水は聖水だった。

 最近、行成の行動が気になった柚璃は占い師に占ってもらいに行った。

 そこで、手渡された物が聖水の入った香水だった。

 柚璃はバケツに水を入れてもらった香水を混ぜて、持って行って行成にかけたのだ。

 始めは占いも半信半疑で効き目を信じていた訳では無かったが、嘘の様に、行成の浮気癖は直り、この秋、婚約することが出来た。

 就職先も決まったし、来年の六月には結婚もする。

 行成の心にはもう、和那はいない…。

 代わりにいるのは、もちろん愛する柚璃だ。

 順風満帆なスタートだった。

 彼と彼女にはパンドラの悪意はもう、届かない…

 彼らにはもう、お互いしか見えないから…。

 醜い呪いは退散するしかない…

(憎らしい…愛が憎らしい…)

 パンドラは愛を憎み恐れる…。

 人が相手を思いやり、愛し合っていれば、パンドラの入り込む余地は無いのかも知れない。

 人を憎むのも人ならば、人を愛する者も人。

 人に危害を加えるのも人ならば、人を助けるのも人。

 どちらを選択するのかはその人次第…。

 人を憎めば、相手も憎む…

 人を好きになれば、相手も好きになってくれるかも知れない。

 その答えを出せる頃にはその人の運命も決まるのかも知れない…

完。