和那の本名はパンドラ。
この名前を言い当てる頃には行成の柚璃への気持ちが完全に無くなり、そして、孤独な死が待っている。
そういうタイプの呪いだった。
人の気持ちの隙間に入り込んでくる嫌らしい呪いだった。
このまま、行けば呪いは成就してしまう…。
だが…
「行成…」
「なんだ、柚璃か…」
パシャッ!
柚璃が持っていた水を行成の顔にぶっかけた。
「バカ、行成!頭を冷やせ!」
「つ、冷て、な、何だよ、柚璃…」
「聞いたわよ、浮気したでしょ!」
「してないって…」
「彼女がいるんだから合コンなんか出なくて良いでしょ!」
「あれは、ただの付き合いだって…」
「別れる…」
「そ、そんなこと言うなよ、ゴメンって、もう参加しないからさ」
「信じられない…」
「信じろって、見ろよ、このまっすぐな目!」
「…濁ってる」
「機嫌なおしてくれよ、あ、そうだ、柚璃、この前、あれ欲しいって言ってたじゃん、あれ買ってやるよ」
「ほんと?マジ?」
「マジ、マジ、大マジ!」
「…じゃあ、今回だけは大目に見てやるか、次やったら針千本ね」
「はいはい、わかりました」
「はいは一回」
「はーい」
薄汚い呪いはカップルのちょっとした愛情表現で簡単に霧散する。
