拓人はその後も病的に【パンドラの囁き】を吹き続けた。

 同じ曲ばかり吹き続けるため、周りに迷惑がられてもいたが、それでもかまわず、ずっと吹き続けた。

 そして、ある日の午後…

Pan07sashi03


(…初めまして拓人君。私はパンドラ…)

 ついに、パンドラの声が頭の中に響き渡った。

 最初は気のせいかとも思った。

 だが…

(ずっと吹いてくれてありがとう…だけど、他の曲も吹きたくない?…【パンドラの告白】っていう曲なんだけど吹いて見たくない?)

 更なる言葉がパンドラという女性の存在を確認させる。

「俺、拓人です。ずっとあなたの声、聞きたかったです…」

(私もよ…ずっと遭いたかった…)

 パンドラの甘い声が拓人を更なる深みへと誘う。

「…そうですね…俺もそう思います…」

「俺もです…」

「…俺も好きです…」

 他の人には独り言を言っているようにしか見えなかった。

 だが、拓人の耳には、パンドラの妖艶な声が囁いて来る。

 一人でいるときは拓人の視線は焦点が定まっていない。

 完全に目がイッている…。

 誰の目にも異様に映るはず…。

 だが、拓人は人前では普通に振る舞った。

 まるで、普通だと言うことを装うかのような態度だった。