拓人はその後も病的に【パンドラの囁き】を吹き続けた。
同じ曲ばかり吹き続けるため、周りに迷惑がられてもいたが、それでもかまわず、ずっと吹き続けた。
そして、ある日の午後…
ついに、パンドラの声が頭の中に響き渡った。
最初は気のせいかとも思った。
だが…
(ずっと吹いてくれてありがとう…だけど、他の曲も吹きたくない?…【パンドラの告白】っていう曲なんだけど吹いて見たくない?)
更なる言葉がパンドラという女性の存在を確認させる。
「俺、拓人です。ずっとあなたの声、聞きたかったです…」
(私もよ…ずっと遭いたかった…)
パンドラの甘い声が拓人を更なる深みへと誘う。
「…そうですね…俺もそう思います…」
「俺もです…」
「…俺も好きです…」
他の人には独り言を言っているようにしか見えなかった。
だが、拓人の耳には、パンドラの妖艶な声が囁いて来る。
一人でいるときは拓人の視線は焦点が定まっていない。
完全に目がイッている…。
誰の目にも異様に映るはず…。
だが、拓人は人前では普通に振る舞った。
まるで、普通だと言うことを装うかのような態度だった。
