
「お、拓人、また、その曲吹いてんの?よっぽど、好きなんだね、その曲、なんてったっけ、それ?パンダの…」
「【パンドラの囁き】だよ、からかうつもりならあっち行けよ」
「いーじゃん、別にあたし、いちおー彼女だよ」
拓人の彼女、秋吉 水面(あきよし みなも)はむくれた。
最近、拓人がかまってくれないからだ。
何かと言うと【パンドラの囁き】を一人で練習している拓人。
ろくにデートもしていない。
「俺は、【パンドラの口笛】を完全制覇するのに忙しいんだよ」
「何よ、男の癖に変なおまじないにこっちゃって…」
「おまじないじゃない、口笛だ」
「わかったわよ。そうそう、パンドラって言えば、あたしの中学時代の友達にパンドラって名前を異常に嫌っている子がいるんだよね~」
「何だよ、それ?そんな奴紹介するなよ」
「わかってるわよ、里桜(りお)可愛いからあたしも紹介したくないし。どっかの誰かが変な浮気心とか出すかも知れないしね~」
「知るか!」
ちっとも話にノッてこなかった。
本当に浮気されても困るのだが、元々浮気性な拓人が可愛いという言葉に全く無反応なのが面白く無かった。
何となく、女性に対する興味を無くしてしまったような…
いや、むしろ、夢中にさせている女がどこかに潜んでいるような気がした。
水面の女の勘だった。
確かに潜んでいる女がいた。
ただ、それは普通の女では無かったが…。