「田島くーん、電話ー、また、彼女さんからー」
「あ、すみません」
浩二の職場に今日も優花が電話をかけてくる。
実は携帯電話が壊れてしまって修理に出すか買い換えたいが、今は持ち合わせが無いという状態だった。
(浩二君、今日何時に終わる?)
「今日は残業だって言っただろ、ペットショップには寄れないよ」
(そう、残念…。明日は早く帰って来てね)
「わかったよ。じゃあ、今日は忙しいからもう切るよ」
(…うん…)
浩二の職場にまで、ペットショップに寄る話をしてくる優花。
少し怖く感じた。
そして、三時間の残業を終えて帰宅すると、玄関には刑事が待っていた。
「田島 浩二さんですね…警察です。少しお話、良いですか?出来れば署までご同行願えませんか?」
「え?あの、どういった訳で…」
「話は署の方で…」
警察では衝撃の事実が浩二を待っていた。
優花は死んでいた。
それも半年前に…
では、ずっと一緒に暮らしていたのは…?
浩二と一緒に寝食を共にしていた女の名前は峰岸 優花ではなく、パンドラというセミナーを開いていた主催者で、80歳を越える老婆、三宅 豊(みやけ とよ)だった。
豊を優花だと思いこみ、ずっと暮らしていたのだ。
しかも、豊は人肉を優花や大家さんを自分の飼っていた犬に食べさせていたのだ。
この事件もパンドラという呪いの影は退魔師達の活躍により、無事、祓ったが、猟奇的な殺人事件という事実は消せなかった。
元々、パンドラの呪いにかかる人間は心に暗いものを色濃く持っている人間だ。
パンドラの呪いが無くなったからと言って、起こしてしまった事件は消えなかった。
退魔師達としてはとてもやりきれない事件だった。
退魔師達は悪霊は祓えるが、人の悪意までは祓えない…。
人が受ける不幸の全てがパンドラではないのだ…。