治が家に帰ると…

「治、良いところに来た。紹介しよう、香坂 明美(こうさか あけみ)さんだ。三ヶ月後には向井 明美(むかい あけみ)になってもらう予定だ。父さん、なかなか、言い出せなかったんだが、結婚を前提に明美さんと付き合っていて…その…」

 父は母を紹介した。

(知っているよ。三年半前から家族だったもん…)

 治はそう思ったがあえて口には出さずに…

「初めまして。僕、向井 治って言います。よろしくお願いしますお母さん」
「治君…」

 明美は涙ぐんだ。

 家族として過ごした三年半はリセットされてしまった。

 でも、治は覚えている、母のやさしさを。

「じ、実はな…治、もう一つ報告があってだな、実はお前に妹が出来る…」

 明美のお腹は膨れていた。

 7ヶ月だった。

「お父さん、お母さん、子供の名前、雪実(ゆきみ)ってつけて良い?」

 治がそう聞いてみると、

「こりゃ、驚いた。偶然だな、ちょうど、子供の名前は雪実にしようと決めていたんだよ。これは運命を感じるな」
「そうだね、僕もそう思うよ」

 雪実は治に不幸を運んで来たのかも知れない…

 でも、家族だったんだ。

 だから、家族として、やり直す時も雪実がいなくちゃ、家族じゃない…

 治はそう思った。

 向井家からはパンドラの驚異は去った。