まだ、ある…
母方の祖父母の事だ。
電話で話した時に思ったのだが、あれ?こんな声だったかなと思ったことが何度かあった。
まるで、祖父母の役を誰かが持ち回りでやっていたかのように…。
母の周りの不審者達に似た声の人間がいたことも…。
今まで見えてなかった違和感がまるで温泉を掘り当てたかの様に噴き出してきた。
「治君、パンドラという言葉に心当たりないかい?」
ある日、勇治が聞いてきた。
心当たり…
考えて見る…
一つだけあった。
姉の12歳の誕生日の時の誕生ケーキ…。
確か、それを売っていたのが、パンドラという名前のケーキ屋だった。
ケーキ屋パンドラと言えば、父と母が出会ったのもパンドラというケーキ屋だった。
治の実の母を病で亡くし男手一つで治を育てていた勤が治の誕生日を祝うためのケーキを買いに立ち寄り、そこで働いていた母と恋に落ち、そして、結婚に至った。
パンドラと言えば、家族の思い出のケーキ屋だった。
家族になっても何かのお祝い事があれば、決まってパンドラのケーキが登場した。
治自身も何度か、その店で母と一緒にケーキを選んだことがあった。
店員は何となく薄気味悪い感じがしたが、ケーキが美味しかったので、気にせずにいつも買っていた。
そうだった…。
母の周りにうろついていた不振人物、その中の二、三人はケーキ屋の店員として働いているのを見たことがあった。
治がそれに気付いた時、勇治は元凶に手が届いた事になった。