「なら、お姉さん、この名刺を警察に持っていくといい…ここに僕の顔写真も入っているし、怪しい人だと言えば、一発で僕は捕まるんじゃないかな?…もっとも、この名刺を掴むことが出来たらの話だけどね…」
と言った。
「くそ野郎!」
雪実は、今まででは考えられない表情で悪態をついた。
治はびっくりした。
少なくとも治の知っている姉は【くそ野郎!】等という暴言は吐かなかった。
「…じゃあ、こうしようか、今度、お父さんか、お母さん同伴でお話をするというのはどうだろう?お父さんとお母さんに僕の顔を見てもらえば何かあった時、警察に捕まえてもらえば良い。ここまでやっても、僕は怪しい人かい?」
「…それは、駄目!」
「何故、駄目なんだい?お父さんにかけた暗示が解けてしまうからかい?それともお母さんの秘密を知られたくないからかい?」
穏やかな表情で語っているが、何らかの形で姉に対して攻撃を仕掛けているようだった。 だけど、それが、何なのか治にはわからなかった。
お父さんにかけた暗示が解けてしまう…
お母さんの秘密…
何を言っているのか解らないが、それが、このおかしな環境を改善する事の様な気がしていた。
そして、それを姉が極度に恐れている…。
それだけははっきり解っている。
家族として、姉が困るような事をしている勇治の事を信用してはならないような気もする。
…気もするのだが、何故だか、何となく、勇治は正論を言っている…。
そう、思えてならなかった。
まだ、小学生で、何の力も無い自分を助けてくれている…そんな感じがした。
その後も勇治は治に会いに来てくれて、話し相手になってくれていた。
すると、不思議と母の周りに現れていた不振人物はその数を減らしていった。
一時期は十人くらいいたのに今は二、三人が現れる程度だった。
