「君、ちょっと良いかい?」
小野寺 勇治(おのでら ゆうじ)は治に声をかける。
勇治は退魔師のグループに属しており、いくつかのパンドラの呪いを祓った事があった。
パンドラ…千変万化する、複雑な悪意の呪い…。
この呪いを追って、勇治達はパンドラという名前の呪いと戦ってきていた。
勇治は治の中に、その呪いの気配を察知して近づいてきたのだ。
だが、普通の人が見れば、怪しい男が声をかけているようにも見えてしまう。
案の定…
「誰ですか、あなたは?警察を呼びますよ」
姉の雪実が現れ勇治を睨む。
「ご、ごめん、怪しい者じゃないんだ、ちょっとこの辺できな臭い気配がしたもんで…って、これじゃ怪しいか…あ、そうだ名刺を渡しておこう。はい、これ!」
そう言うと勇治は姉の雪実にではなく、弟の治に渡した。
「お姉さん、この名刺を破り捨てたかったら自分でやってね、決して弟さんにやってもらわないように…」
勇治がそう言うと雪実は…
「ぐ、ぐぅうぅぅ…」
とまるで獣の様なうなり声をあげた。
「お、お姉ちゃん…?」
治はキョトンとした。
「な、何でも無いわ…行きましょう、ムーちゃん…」
「い、痛いよ、お姉ちゃん…」
雪実はまるで、大人、いや、それを通り越して獣の様な力で弟の手を引いて去っていった。
それを遠目に勇治は…
「今回のはあの子で、間違いなさそうだな…」
とつぶやいた。