「よう、向井、今日、お前んち行って良いか?」
治は友達の菊池 裕太(きくち ゆうた)に声をかけられる。
「…え?」
治は困った。
友達とは遊びたいが、家に来られたらおかしくなった母を見られてしまう…。
「実はさー、俺、レアカード手に入れたんだよね~。だからさ、みんなで一勝負しようと思ってさ~」
「う、うん…」
「菊池君、ゴメンね、今、母が風邪ひいているから、またにしてくれる?」
答えに困っているといつの間にか姉がいてフォローを入れてくれていた。
走り去る姉を見つめる裕太。
頬を赤らめている。
「菊池君、どうしたの?」
「おい、向井、あれ、お前の姉ちゃんか?」
「そ、そうだけど…」
「可愛いな…」
「そ、そう?」
治は何とか家に招かずにすんだ事にホッとした。
治は気付かなかった。
初対面のはずの姉が裕太のことを【菊池君】と呼んでいたことに…。
突然、現れたのに裕太達が治の家に遊びに行くことを知っていた事に…。
幸せになろうと思って一緒になった家族が段々、離れて行く…。
まだ、幼い、治はその事を正確にはかれる程、人生経験は足りてなかった。
おかしいのは母だけでは無かったのに…。
あまりにも目立つ母の異常に隠れて見逃しがちだが、姉の行動にも矛盾が見え隠れしていた。
