少年の名前は向井 治(むかい おさむ)11歳。

 両親と姉との四人暮らしだ。

 治は父親の勤(つとむ)の連れ子で、母と姉とは血がつながっていなかった。

 母、明美(あけみ)とその連れ子の姉雪実(ゆきみ)とは3年前から家族になった。

 家族間の仲はかなり良かった…

 …良かったはずなのに…

 この所、母、明美の様子がおかしい…。

 そう気付き始めたのは姉、雪実の12歳のバースデーを家族で祝った後だった。

「ふふふ、…後、一年…」

 ろうそくの炎を消した直後、不気味な声が聞こえた。

 家族全員が怯えたのを記憶していた。

 最初は隣の家のテレビの音かと思ったが、どうやらそうでもないらしいことがわかり、家族間での怖い話としてその日は忘れたのだが…

 翌日から、母の行動が段々おかしくなっていったのだ。

 治は父に相談したが、

「そんなことはないさ…母さんは普通だよ」

 と取り合ってくれなかった。

 絶対におかしいのに…。

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 母の行動で変わった事…

 一つ目、人付き合いが悪くなった。

 前は人をたくさん家に招いていたのに、今は全然だった。

 二つ目、ブツブツ言うようになった。

 前は家族でいろんな事を話したのに今は一人でいることが多くなり、気付くと何かボソボソ言っていたりすることが多くなった。

 三つ目、人相が悪くなった。

 前は息子の治が思うのもなんだけど、天真爛漫って感じの母だった。

 でも、今は背後にたたれるとぞっとするような表情を常にしていた。

 四つ目、自傷行為。

 気付くと爪でかりかり自分の皮膚を傷つけていたり、髪の毛を何本か抜いたりしている。

 五つ目、言葉遣い。

 治の事を【ムーちゃん】と呼んでいた母が今は【坊や】に変わっている。

 六つ目、知らない知り合い。

 姉が12歳になる前には見たこともない人達が、母と話しているのを時々見かけるようになった事。

 見かけで判断するのもあれだけど、明らかに普通の人ではない人達だった。

 単純に羅列するだけでもこれだけおかしいのに父は普通だと言う。

 一体、母の何処を見ているんだと思っていた。

 どう見てもおかしいじゃないか…。

 治は言うが父は信じてくれない。

 姉は気付いているらしく、一緒に悩んでくれるが子供だけではどうしようもなかった。