次の日、朝早く起きると駅に着く前に彼女に会った。

 軽く会釈をしてきたので、会釈で返す。

 それだけ、だった。

 だが、靖にとっては嬉しくて、嬉しくてたまらない。

 絶対、彼女は自分に気があるんだ…

 そう思えて仕方無かった。

 それから、少しずつ、家の近くで彼女と会うようになり、軽く会釈をしあう。

 その後で、仲間を連れてきたらしい俊征から隠れて電車に乗り、一駅前で別れる。

 そんなことを繰り返していた。

(明日、彼女に会ったら、彼女の名前を聞こう…)

 靖はそう、決心していた。

 もう、大分、顔見知りになっているし、名前くらい聞いても良いはずだ…。

 そう思っていた。

 名前を聞いた時が最期だとも知らずに…。