「宮本 京平さんですね…」
「何だてめぇは?」

 京平は道ばたで知らない男に声をかけられた。

 全く見覚えの無い男だ。

 何故か、自分の名前を知っている。

「失礼しました。自分、松村 俊征(まつむら としゆき)っていいます。実は、あなたに死相が出ていまして…あ、いきなりこんな事言って怪しまれるのも当然ですよね、ですが…」
「もう、いい…」
「え?」
「いっぺん、死んどけやーっ!」
「ま、待って、がっ!!」

 京平は俊征を殴り倒した。

「二度と俺の前に顔見せるな!」
「そ、そうじゃないんです…待って…」

 捨て台詞を吐いて立ち去る京平。

 ボコボコにされた俊征が残される。

「もう、ムカツク奴ね。あんな奴助けることないんじゃない?」

 京平の事が怖いので隠れていた黛 玲於奈(まゆずみ れおな)が俊征を介抱する。

「そんなこと言わないで欲しい…。彼はこのままだとパンドラに殺されてしまう…。」
「ゴメン、わかってる。でも、トシがやられちゃったからちょっと頭にきたんだよ。それにあいつで六人目、あいつが死んだら、あのパンドラの呪いは完成しちゃうもんね」

 俊征と玲於奈はパンドラの呪いを調べていて京平の受けている呪いにたどりついていたのだ。

「宮本さん、お願いです。話を聞いて下さい」
「また、てめぇか…」

 すぐに殴ろうと思ったが思いとどまった。

 近くには交番がある。

 殴れば現行犯で捕まってしまう。

 もちろん、俊征はそれを考えに入れて、タイミングを見計らって声をかけたのだ。

「あなたの近くにパンドラという名前の物か人はありませんか?」

 俊征にそう言われた時、京平は耳元で瑛子が自分はパンドラだと言っていた事を思い出すが、それを俊征に言ういわれは無い。

「知らねぇよ。そんな奴は…」
「パンドラという呪いは必ず、被害者にパンドラという事をどこかで認識させないといけません。だから、どこかで、あなたはパンドラという単語を耳にするか目にするかしているはずです…」
「知らねぇっつってんだろ!また、ボコるぞ、てめぇ!」
「お願いです。耳を傾けてください。」
「うるせぇ、消えろ!」

 京平は走って、俊征から離れた。

「今回も空振りだったね…」

 玲於奈も出てきて残念がる。

「そんなことないよ。彼にパンドラという呪いは認識させたはずだし、彼は、パンドラの呪いの事を【そんな奴】と言った。だから、今回のパンドラは物ではなく人の形をしたタイプだというのがわかったよ」
「すっごーい、名探偵!たった、あれだけでそこまでわかっちゃったの?」
「そんな、別に大したことじゃ…」
「榮一郎(えいいちろう)さんが太鼓判を押すのもわかるよ」
「そうだ、榮一郎さんに相談しよう。まだ、素人の自分達じゃ手に負えないかも知れない」 

 俊征は従兄弟で、霊能者、退魔師の先輩でもある松村 榮一郎(まつむら えいいちろう)に相談する事にした。