紫織は習い事があるため、大輔が一人、トボトボと歩いていると…

「パンドラという何かで奇妙な事があったら、こちらまでご連絡下さい」

 駅前で、数人の男女が駅前でチラシを配っていた。

 パンドラ…そう言えばレースのハンカチにそんな文字が…

 いやいや、だからって家が移動するなんて考えられない…

 そう、思いチラシは受け取らず帰宅した。

 その後もどんどん家は後退していき、ある日、とうとう、恋人の座から降ろされた。

「えーと、どちら様かしら?紫織に会いに来たの?」

 紫織の母親にそう言われた時はショックだった。

 二人目の母親だとも思っていたのに…

「えーと、野沢君だっけ?私に何か用?」

 出迎えた紫織の発した言葉はもっとショックだった。

 恋人から紫織に言い寄る男に変わっていたからだ。

 呼び方も大輔から野沢君になってしまった。

「ちょっと、紫織、今日もあのハンカチ持って行くの?」
「そうだけど、悪い?」
「悪いわよ。いい加減別のハンカチにしなさいよ。汚いでしょ」
「汚く無いわよ。綺麗よ」

 紫織は制服のポケットからパンドラのハンカチを出して顔を埋めてうっとりする。

 その顔は大輔から見て異常に見えた。

「紫織ちゃん、駄目だ、そのハンカチ捨てて!」

 大輔は自分がプレゼントしたそのハンカチが原因だと本能的に察知した。