「はい、これ、誕生日おめでとう紫織(しおり)ちゃん」
「ありがと、大輔(だいすけ)、なぁに、これ?」
「綺麗になれるっていう噂のレースのハンカチだよ」
「何?私が綺麗じゃないって言いたいの?」
「ち、違うよ。綺麗だよ。ただ、もっと綺麗にって」
「冗談よ。開けて良い?」
「もちろん」
「ほんと、綺麗ねここにPandoraって刺繍がしてあるのね」
「今、人気でさ、手に入れるの結構苦労したんだよ」
山里 紫織(やまさと しおり)は野沢 大輔(のざわ だいすけ)から破滅を呼び込むレースのハンカチを受け取った。
紫織と大輔は幼なじみのカップルだった。
家が隣同士で昔はよくお風呂にも一緒に入った仲だった。
誕生日が紫織の方が、3ヶ月早いためか、彼女が主導権をいつも握っていた。
今日もいつもの日課で紫織を迎えに隣の家まで行った。
だが…
「生島(いくしま)…」
大輔は目が点になった。
表札には山里ではなく生島と書かれていたからだ。
生島は確かはす向かいの…
そう、思ってはす向かいの生島家がある方を見ると…
「あら、大輔君、いつも悪いわね、紫織ぃー起きなさいー大輔君、迎えに来たわよー」
紫織の母親が出てきた。
「はーい、今、起きるわー」
奥からは紫織の声も聞こえた。
表札には山里と書かれている。
隣ではなく、はす向かい…だったか?
いや、そんな訳はない…
だって、紫織の部屋と自分の部屋は窓を伝って行き来出来たはず…
はす向かいじゃ出来ない…
大輔が困惑していると…
「何、しょぼくれた顔をしているのよ!行くわよ、大輔!」
「え、あ、う、うん…」
混乱したまま、一緒に学校に行く…。