玲於奈はここで、一つミスを犯していた。

 玲於奈の周りには確かにパンドラという名前の女は居ない…。

 だが、パンドラという名前の花は少しずつ、香月の生気を奪っていた。

 玲於奈は榮一郎の言っていた言葉は100%理解していた訳では無かった。

 パンドラという女の呪いはいつも人の姿で現れるという訳では無い。

 形を変えてパンドラという名前の呪いが人を襲うのだ。

 日に日に香月はやせ衰えて行った。

 病院にも一緒に付き添ったが原因らしい原因は見つからず、ストレスからくるものだと判断された。

 それにしても、痩せ方が尋常ではない。

 艶々だった香月の肌が今では荒れまくってカサカサだった。
      
「お、大森さん、ですか?」

 榮一郎の所に行っていた俊征が一週間ぶりに香月とあってギョッとした。

 彼女が病的にやせ衰えていたからだ。

 一緒にいる、玲於奈は涙目になっている。

 まただ…。また、玲於奈が悲しんでいる…。

 原因は何だ…。そう考えた俊征は…

「あ、あの、今度、大森さんの部屋に上がらせてもらって良いでしょうか?」

 普段の俊征からは考えられない言葉だった。

 自分から、異性の部屋に遊びに行きたい等というのは…。

「あら、私は別に良いんだけど、彼女が何て言うかしらね、ねぇ、玲於奈」

 玲於奈は俊征に好意を持っている。

 彼女の親友とは言え、異性の部屋に遊びに行くと言って、彼女がいい顔をする訳がない。

 だが…。

「か、彼女も望んでいると思います。自分は行きます」

 俊征は言い切った。

 絶対に、香月の部屋に、原因となるパンドラが潜んでいる。

 榮一郎から、パンドラについての話を聞いてきていた彼は確信していた。

 玲於奈はそんな、俊征の言霊にまた、暖かさを感じた。

「行こう、かづっちの部屋に!」

 香月の部屋はさすがに読者モデルをしているだけあってかなり、お洒落な部屋だった。 いつもなら、そわそわしてしまう俊征だったが、今は違う。

 部屋の中の違和感を探す。

 ベッドには…無い。

 机には…無い。

 クローゼットには…無い。

 タンスには…無い。

 テーブルには…無い…いや、ある、何だ、この花は?

「あぁ、それ?何て言ったかな、何とか君からもらったの。新種のバラよ」

 香月は何気なく答える。

「名前はパンドラですね!」

「そ、そう、パンドラ、よくわかったわね…」
「これだ、これが、原因だ!」

 俊征は元凶を見つけた。

「でも、これ、女の人じゃなくて花だよ?」

 玲於奈が俊征に尋ねる。