「ふ、ふふ、ふふふふふ…その通り、私はパンドラ…。玲於奈じゃないわ…でも、残念ね、彼女は見つからない。彼女はもう記憶を書き換えられて別の人間として生活している…。あなたに彼女を見つけることは出来ないわ。ほほほほほほ…」

 玲於奈改め、パンドラは勝ち誇る。

 彼女の忌み嫌う愛を一つ潰したと思ったからだ。

 だが…

「見つける。自分は彼女を見つける」
「ほほほ、見つけるですって?どうやって?この町だけでも何万って人間がいるのよ!どうやって?ほほほほほほ…」
「…約束したから…彼女と…何万人いようが必ず見つけるって…」
「ば、バカじゃないの、見つかるわけ…」
「見つける!」

 俊征は断言する。

「やめろぉぉぉぉぉぉ~っ!!」

突然、狂ったように俊征に襲いかかるパンドラ。

だが…

「そこまでだ…」
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 突然、現れた影の持っていたお札をおでこに貼られて苦しみ出した。

 現れたのは…

「榮一郎さん…」

 松村 榮一郎(まつむら えいいちろう)、俊征の従兄弟だった。

「俊征君、久しぶり、元気だった?」
「あの、どういう…」
「あぁ、これ、僕が霊感が強いのは知ってるだろ?ちょっと、お札に霊力を込めてだね」
「いえ、そういう事では…」
「この女ね、…こいつはパンドラっていうやたらバカでかい呪いの一つさ。厄介なのは一つ一つ形が違うんだよね、こいつはね…」

 しゃべりながら、パンドラに塩をまく。

 すると、パンドラだった者はグズグズに崩れていった。

 呪いが育ってしまうと恐ろしいが、俊征の件の様に、比較的早期に発見出来ればパンドラという呪いは大した事が無かった。

 行方が解らなくなっていた玲於奈も目の不自由な老婆として入院していた所を俊征が発見し、無事に元の姿に戻る事が出来た。

 愛の前に敗れ去ったという感じだ。

「普通は一人であそこまで解決出来ないんだけどね…」
「え?あの、どういう…?」

 俊征は榮一郎の言う言葉の意味が解らなかった。

「パンドラという呪いに対し、人一人の力では対抗出来ないんだよ、普通はね。でも、君は一人でパンドラを追い詰めていた」
「そんな、事は…」
「君はパンドラに対して、何か対抗する力を持っているのかも知れないね」
「じ、自分にはそんなものは…無いと…思います…」
「謙遜しなくて良いよ、実際大したものだったよ。君のその、言霊というかね、呪いを打ち破る力を感じたよ」
「私はトシに助けられた時、暖かい力を感じたよ」

 玲於奈も俊征の自信につながるものが見つかったみたいで嬉しかった。

「そこでなんだけど、出来たらで、良いんだけどね、パンドラの呪いで困っている人達を助けてくれないかな?と思ってさ、駄目かな?」

 意外な提案だった。

 今までは、悪霊とかの問題が出てきたときは榮一郎がいつも解決していたのだが、その榮一郎が自分を頼って来た。

 助けてもらうことは何度もあったが、助けを求められるような事は無かったのだ。

 俊征にとって、榮一郎は格上の人間であって、自分が助けになるような人間では無かったのに…。

「…私はトシが困っている人を助けてくれたら嬉しいかな…。正直、危ない真似はして欲しくないっていうのもあるけど、今回、私、どうしようもなく怖かった。不安だった。トシが見つけてくれなかったらと思うと、今でも震えがくる…。他の人もあんな辛い思いをするのかと思うと助けられるのであれば、助けてあげて欲しいと思う」
「れ、玲於奈…」
「玲於奈って呼んでくれて嬉しいよ」
「え、いや…」
「最初に言ったのが私じゃなくてパンドラにだったってのがちょっと引っかかるけどね」
「それは、その…」
「その勇気を他の人にも分けてあげて。もちろん、私も協力するし」
「それは、危ないよ」
「トシが守ってくれるんでしょ。私は平気だよ」
「え、あ、うん…」
「はは、妬けちゃうね。とにかく、一度、考えてみてよ」
「は、はい」

 俊征は正直、迷ったが、玲於奈が薦めるのなら…と思った。