そんな俊征をいつも引っ張っていくのがショートカットの良く似合う黛 玲於奈(まゆずみ れおな)だった。
ずば抜けて美人という訳では無いが、生来の明るさも手伝って男女問わず人気があった。 告白も両手の指でも足りないくらいされているが、いつも「気になる人がいるからごめんなさい」と断っていた。
気になる人とはもちろん、俊征の事である。
だが、奥手の俊征には玲於奈の好意には気付いていたが彼女の積極的なアプローチにどう答えて良いものか解らないでいた。
「ま、黛さん…」
「んもう、玲於奈で良いって言ってるじゃん。で、なぁに?」
午後の昼下がり、二人は学校の屋上にいた。
「れ、…ま、黛さんは、何で自分にかまうんですか…?」
「楽しいから。一緒に居て落ち着くからだけど、トシは違うの?」
玲於奈は俊征の事を【トシ】と愛称で呼ぶ。
だけど、俊征は彼女の事を【黛さん】と呼んでいた。
俊征は自分の事を脇役、玲於奈の事を主役だと思っている。
自分と玲於奈は不釣り合い…。そう、考えていた。
「い、いや、そんな事は…」
「なら、良いじゃない。それより、今度の日曜日、空いてる?私ね、ちょっと行ってみたい所あるんだけど、付き合ってくれるとうれしいんだけど!」
「じ、自分で良ければ…」
「そ、ありがと」
玲於奈は微笑む。
それが、俊征にとってたまらなく愛おしい。
玲於奈はそんな奥手の俊征だけど、誠実な所が好きだった。
「…ねぇ、トシ…」
「な、何、ですか?」
「んもぅ、その敬語は何とかならないの?私達、友達じゃん」
「ご、ごめん…」
「まぁ、良いわ。トシは何万人の中から、私を見つける事って出来る?」
「え?…さ、さぁ…」
「もーう、そこは、出来るって言ってよ、ウソでも良いから」
「ご、ごめん…」
「ふふ、でも、そこでウソをつけない所がトシの良いところかな?」
「あ、ありがとう…」
「お礼を言われるようなことじゃないよ、トシの良いところはみーんな知ってるつもりだよ。だから、トシも私の良いところ、見つけてね」
「う、うん」
「約束よ」
俊征と玲於奈はそんな何気ない約束を交わした。
