姿形を変えて、パンドラという呪いは世界中に広まっていった。
「この詩、何か引き込まれるんだよね、ほら、この「あなたを虜にする」ってところ」
「知ってる、知ってる。パンドラって歌だろネットでも話題になっているよ」
「買いだね、これは」
「俺もダウンロードするわ~」
パンドラという歌詞が広まる。
「ねぇ、携帯小説で、パンドラって話があるの知ってる?泣けるよねー」
「あぁ、切ねーよなぁ、俺も泣いちまったよ」
「続きが早く知りてー」
「本が出たら買うね、僕は」
パンドラという携帯小説が広まる。
「守谷(もりや)ぁゲームばっかしてねーで映画行くんだろ?」
「バカ、これ面白れーんだよ、お前もちょっとやってみろって」
「はぁ?俺、ゲーム嫌いだって…そうだな、面白いな…」
パンドラというゲームが広まる。
人々の生活に根付いた品物に姿形を変えて心の隙間に忍びよる…
それが、パンドラという呪いだった。
ターゲットは不特定多数。
手当たり次第。
とにかく、人を殺すための呪いだった。

「よろしくね、学(まなぶ)君。これはお近づきのしるしってことで…」
「良いの、杏子(きょうこ)ちゃん?大事にするよ!」
「だーめ、パンドラって呼んでって言ってるでしょ?」
「そうだったね、でも何でパンドラなの?全然名前と違うじゃん」
「…パンとどら焼きが好きだからよ。だから、パンドラ。ね、おかしくないでしょ?」
「もっと良いのがあると思うんだけど、例えば…」
「いいの!パンドラが良いの!」
「わかったよ。パンドラちゃん」
今日もどこかでパンドラという名の悪意が忍び寄るかも知れない…
不自然に自分をパンドラとアピールする者がいたらご注意を!
完