たまらず客席に逃げようとするパンドラ。
すると今度は客達が隠し持っていた塩をパンドラに投げつける。
「な、何をするんだ!?」
浩紀は怒鳴る。
が、間一髪入れずに客席の後ろと左右に置かれたものから暗幕が外され中から大量の鳩が飛び出した。
四方から鳩が飛び出したことで、パンドラの逃げ場はなくなり、みるみる内に身体が崩れていく。
浩紀は何が起きたのか解らない。
すると、榮一郎先輩達が説明を始めた。
「…これには、川瀬君、君からパンドラを引き離すための許可を君自身からもらわなければならなかったんだ」
「それとパンドラが自ら名乗る事も必要だったの。弱点はいくつかあるみたいだけど、私達が知り得たモノはこのやり方だったのよ」
「この女は失われたはずの古代の呪術から生まれた悪鬼よ。だから、天使のイメージがある白い鳥や清めの塩等が苦手なの」
「騙して、悪かったね、でも、川瀬君、君を助けるにはこれしか無かったんだ。あのまま行くと君の知り合いは全て殺されて、君は絶望してひとりぼっちで死ぬことになっていたんだ。危ないところだったんだよ」
「そ、そんな…」
最初は動揺していたが、パンドラがぐずぐずに崩れ去るとまるで憑きものが落ちたかのように、パンドラに対する愛着が消えていた。
パンドラは死んでしまったのに悲しくもなんともない…。
それまで、パンドラ中心に生きていたのがウソのようにどうでもよくなっていた。
浩紀のアパートの畳の下に、無くなっていた思われた石棺がまるで植物の様に根付いていたが、塩を振りかけたらこの石棺も土塊にかえった。
浩紀は助かったのだ。