「川瀬君。この前は悪かったね」

榮一郎先輩が再び声をかけた。

浩紀は怪訝顔で見返す。

「何ですか?俺、急いでいるんで…」
「それは悪かったね。実は、この前、変なこと言ったお詫びと言っちゃなんなんだけど、今度、僕の入っているマジックサークルで手品をやるんだ。良かったら、いや、是非、来てくれないか?」
「俺、彼女と暮らしているんで、そんな時間無いです…。いろいろやることがあって…」

断ろうとする浩紀。

「なら、その彼女を連れて来ればいいよ。彼女を喜ばせたくないかい?」
「…それなら、考えて見ます」

パンドラが喜ぶなら…と浩紀は参加をするかどうかを彼女に聞いて彼女が参加しても良いと言えばマジックを見ることにした

「マジック?…そうね…面白そうね…。浩紀さんのお知り合いもたくさん来るのだろうし…」
「そうか。じゃあ、先輩に参加するように言うよ」
「ふふふ…楽しみね…」
「そうだね、楽しみだね」
「一人一人、お名前、教えてね」
「あぁ、わかったよ」

パンドラもマジックショーの見学を認めた。

浩紀は解っていなかった。

名前をパンドラに教えて例え写真でも顔を見せたが最期、その知り合いには死が待っているという事を…。

日曜日になって使われなくなった学校の体育館でマジックショーは執り行われた。

浩紀はパンドラを連れてやってきた。

「おぉ…」

他にもお客さんは来ていてパンドラのあまりの美しさにどよめきのような声が漏れた。

浩紀は優越感に浸っていた。

これが俺の彼女だと。

パンドラは体育館に来ている人間を一人一人見て回った。

まるで、これから食事でもとるかのように舌なめずりをしながら。

マジックショーの前に前座として、漫才などがあり、ほどよく和んだところで、今日のメイン、マジックショーが執り行われることになった。

マジシャンは榮一郎先輩の友人、勇治(ゆうじ)先輩だった。

彼も榮一郎には及ばないが霊感が強いと言われていた。

カラカラと暗幕をかぶせた何かが客席の後ろと左右に運び込まれる。

浩紀はマジックの種か何かだと思った。

パンドラも同じように思っていた。

客席の後ろには榮一郎先輩が。

左側には栄美(えみ)先輩が。

右側には翔子(しょうこ)先輩がついた。全員霊感が強い事で有名な先輩だった。

そして、正面には勇治先輩がついて、彼はマジックショーを始めた。